5.0
人の側面
往々にして、人は他人の見たい部分だけを見るものだ。
自分にとって都合の良い部分だけを。
そうして勝手に評価して、時には蔑んだり、同情して自分の方が優位だと、価値を押し付けたりする。
彼女はこういう人。彼女は不幸せ。
本書では、周囲がそれぞれの思い描いた人物像を押し付けた主人公に、自分の都合の良い返事をしないからと、勝手に不幸だと決め付けて離婚を迫る。
彼女の夫を悪者にして。
彼女の夫こそが、妻を庇って周囲にそう思わせるように仕向けたというのに。
「オレを悪者にして良いから」
この言葉を言える程、自分は誰かの為に献身してこなかった。
誰かを守る。
たった一人の大切なヒトを守る。
作者の、人への冷静な視線に、今回もやられました。
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真綿の檻