5.0
結末まで考えさせられるストーリー
読破しました。
承認欲求が強いけど自分で何も決められない、依存性の高い母親と、そんな妻に嫌気がさして白々しい父親。
そんな2人に育てられた水帆は、幼い頃が無意識に自分の気持ちを押さえ込み、周りが求める反応を返す事を良しとしてた子で。だからこそ、自分の気持ちに耳を傾ける事ができない。その方法が分からないまま成長した。学生時代の友達や初めてできた彼氏に対しても、相手の心を汲んでとか自分の気持ちも交えてコミュニケーションを取る事ができないから誤解もされたし、恐らく水帆の世界に色が無かったんだろうなと思う。
成海ヒカルに会って、自分の中にある空っぽで無の部分が共鳴して、そのくせ衝動的で危うい行動を取ってしまう所まで2人は似てて。だから一緒にいる時間は安らげたのかな。
そんな2人が、衝動的な感情で一度離れて。若くして亡くなった同級生の折口さんの葬儀がキッカケで再会する事になった。
折口さんの母親からの依頼で彼女の恋人を探す事になり、様々な人と出会ったり出会い直したりする事で、人を多角的にみる事や相手の背景や気持ちなんかを感じとる事ができるようになって。成長して、迷いよたつきながらも自分の足で歩けるようになった。希望が持てたストーリーだと感じた。
心療内科?臨床心理士?の成海母が意図的に計算して水帆の母親を操作しながら環境調整したけど、水帆は揺れながらも成海母を頼る事はなかったし、よろけて崩れそうになった水帆を助けたのは水帆自身が築いた友人や先輩達との絆だから。
ヒカルも自分で考え、自分の足で立って進めば壊れないって分かったと思える描写があったし。
もしかしたら、それぞれ自律した将来、水帆とヒカルが再会して共に歩む未来もあるんじゃないかなと思いました。
いずれにしても、考えさせられるストーリーで好きな作品です。
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