3.0
考え得る最悪に近いケース
敢えて最悪なケースを描いたんだろうか。
いじめがネットで拡散され、いじめっ子が危害を加えられた末、一家は引っ越しを余儀なくされる。
保護者はヒステリックになり、最も状況を客観的に整理するべき教師は役立たずで、登場する大人の誰もが、最後まで事態を収束させることができなかった。
本来なら、いじめの顛末と、ネットで拡散されてしまったこと、そしてその結果は、関連はしても別々の出来事なので、分けて考える必要がある。
ネットで拡散したのは誰なのか、その結果引き起こされた嫌がらせにどう対処していくのかは、それぞれ調査検討し、謝罪なり警察に相談するなり、それぞれの落とし前をつけるのが一般的である。そこは完全に大人が法律を以て対処していくもので、道筋さえついてしまえばあとは流れ作業のようなものだ。
問題はそもそもの根源である「いじめ」の解決である。
本作では、当事者である子供と親はほとんど向き合えない。子供の言い分を、なかなか引き出すことができない。子供同士も決裂したまま終わる。漫画作品としては、いかにも中途半端で後味の悪い終わり方である。
しかし、現実もこんなものかもしれない。大人である作者の方が、無理矢理子供の気持ちを登場人物に語らせるのではなく、手紙の内容も含め最後までよく分からないままにしてある点で、誠実な作品だと思った。
ただ、やはりネットに拡散云々は、焦点がぼやけてしまうように感じた。そちらの問題が大きくなりすぎて、「いじめ」を飲み込んでしまったような印象である。
少しでも教訓を得るとしたら、もし自分の子供が加害者になったとして、一時的に混乱したり、ヒステリックになったとしても、できるだけ早く冷静に子供と向き合うことが、子供のため、ひいては被害者のためにもなる、という反面教師か。
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娘がいじめをしていました