5.0
理由なんてなんでもよかった
私も田舎育ちで都会で暮らしている1人です。バリバリ働いて、というほどでもないですが、仕事があり家族があり田舎の生活より都会の生活の年数の方が長くなりました。
身につまされる内容も多く、結婚がなくともきっと私も田舎に帰らなかったろうと主人公と自分を重ねながら読みました。
「死因が分からない」という感想も多く見られましたが、死因なんて本筋とはさほど関係なく、何でも良かったんだと思うんです。縛られていた社会から突然ポン、と脱出する、したことを表現する方法として分かりやすくするための「死」だと思いました。だから何で死んだかは関係ないと。生きて縛っていた人たちとの繋がりはそこでプツンと切ることができた。「死」で表現した事で出た側と出られなかった側の対比がより明確に感じられました。
最後のキーホルダーを燃やして弔う場面は、抜け出したいという思いを一番分かっていた主人公が(本人の気持ちの上で)連れ出せたという安堵なのか、贖罪なのか。
女性が田舎から抜け出すには、高校や大学でそれなりの進学をするか外の人と結婚するか、おそらくそのぐらい。余程の大きなことがなければ出るのが難しい人は少なくないのでは。(最近はどうなんでしょうか?)
もちろん田舎も悪いことばかりではないし、都会は都会で嫌なことも多いですが、記憶の中にある幼かった自分を思い出すと田舎暮らしには戻れないな、と今は思っています。
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帰郷