5.0
残酷で、哀しく、美しい世界
アルカナシリーズでこの作者さんを知って、その流れで読みました。
おとぎ話に出てくるようなかわいい主人公ですが、ストーリーの冒頭はかなり残酷で絶望感が漂っています。
庭の池の水に引き込まれ、気がつくと異世界に来ていた幼い女の子、有紗陽(あさひ)。心優しい男の子、翠葉流(すばる)に助けてもらいます。
ですがムラの人間は、風変わりな見た目の有紗陽を訝しみ、神の生贄として湖に沈めてしまいます。ひどい。
湖の中で有紗陽は水神と出会います。
水神は有紗陽を妻にすると決めますが、帰りたいと騒ぐ有紗陽。
水神はそんな有紗陽から声を奪います。ひどい。
そして、絶望と空腹で衰弱していく有紗陽の姿を、興味なさそうに見下ろすのでした。本当ひどい。
その後、有紗陽は人間の世界に戻るのですが、この出来事以降、水神に恐怖心を抱くようになります。
有紗陽にすっかり嫌われてしまった水神。
水神は、有紗陽が涙を流す姿を見て、涙に特別な力を授けます。
有紗陽はそのことに気付きませんが、その涙の力のおかげで、有紗陽は水神の加護を受けた巫女として、ムラの人間に受け入れられるようになります。
水神は無慈悲なようで、有紗陽にだけは優しいんです。
ある日有紗陽は、あるムラの巫女の墓を訪れ、そこで自分が元の世界に戻れないことを悟ります。
目の前の空が大きく歪み、やがて雨となるシーンが、有紗陽の絶望感を物語っていて、すごく印象的でした。
無料分は絶望感漂うあたりで終わりますが、まだまだ話は長いようなので、美しい女の子に成長した有紗陽のこれからが気になります。
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2
水神の生贄