5.0
ルウェリンがポジティブ進化して頼もしい。
帰宅すると隣人が目に付く所でたまねぎを大量に剝いている日々があると気になりますし怖くもなり得ます。でも外では凍死者も続々と出る世の中、冷える階段で何時間もそうする価値があるのか、とそこを読み返すとまだ不明である段階の切ない真実にジンと胸を打たれます。ルウェリンは悪い人だと自身をそう言いますが、決して主人公シャボンヌに対して理性失くして強引に事を運ぶ事等せず傷付けないとも言い切ります。従順な程誠実で、シャボンヌに難題を与えられて難しいと思っても価値があると指摘されればそれを守ります。〇人鬼という表現はルウェリンのしてきた行いとして正しくもあり、では嗜好なのかと言うとそうではありません。それらの「復讐」さえ、逆に命を狙われるとしても行動するなと言われればルウェリンは約束を守ります。シャボンヌが知らないシャボンヌの背景ごと向き合うルウェリンは孤独ですが、シャボンヌの幸せと無事を願って冷たい階段でたまねぎを剥くのは彼の生き甲斐なのだろうなと思います。たまねぎはルウェリンにとって初めて与えられた治療薬(の代わり)。ルウェリンに傷薬を譲る為に自傷までして薬を求めた人間がいて、それはたまねぎになってしまったけれど、ぬくもりを感じたのだろうなと思います。寒い階段を見ても、手の中のたまねぎに安堵するのです。主人公シャボンヌは器用とは言い難く弱さで後悔する事もありますが、人間としての一線は守る矜持があり、極限の状態で孤独でも、してはならないと思う事は断り死を突き付けられても受け止めます。それがどれだけ稀な事でルウェリンに希望だったしても、シャボンヌには当たり前の事でしかない。弱さにも強さにも惹かれる姿が愛なのだなと、ふたりの会話のひとつひとつが問答にも見えてじっくりと読ませていただきました。
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殺人鬼ルウェリン氏のロマンチックな晩餐