5.0
恋と愛の違い
普通の主婦・夏が夫の部下(龍さん)と恋に落ち忘れていた女の部分を取り戻す。会社員と劇団員の二足のわらじを履き、恋愛に対してのめり込むことなく飄々として、けして本当の自分を出すことなく生きてきた龍さん。そんな2人の純粋な、でも許されない恋。2人の純粋な気持ちのやり取りに、胸が締めつけられました。夏の夫は、真面目に家族のために生きている人。そんな旦那さんが夏がパート先でパワハラに遭っている現場に踏み込み、冷静かつ大人の対応で夏を守るシーンがありましたが、そのシーンでは、大切な人を守ろうとする男の愛というものを感じて、夏と龍さんの関係とはまた違う深くて強い愛情に1番泣きました。
恋という感情と、愛情の対比がうまく描かれていたように思います。
多くの方が書いてるように、龍さんの事故を思わせるラストは、個人的には俳優として成功する龍さんを心の中で応援しながら家族との生活を守り続ける夏さん…という展開で終わるのを想像(期待?)していたので唐突に終わった様に感じたりもしましたが、見方を変えれば、恋という激しい感情(夏さんと龍さんの関係)は長続きするものではなく、穏やかな愛情(夏さんと旦那さんの関係)はお互いの努力で日々を積み重ねていくという事の対比を表しているのではないかと思うと納得がいくラストだったかもしれません。
かつ、夏さんの胸の中にずっと忘れられない恋として残り、龍さんの存在を恐れた旦那さんが自分なりにケリをつけて救われ、大切な恋を綺麗なまま胸に秘め続ける龍さん3人ともがある意味ハッピーエンドになるのは、このラストだったのかもなあ…とも思いました。
普通で極々ありふれた、でも人として一本筋が通っているヒロインを描かせると最高の作者らしい、大人の恋愛ストーリーだと思います。一読の価値ありです。
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ふれなばおちん