5.0
誰のせいなのか何が悪いのか
嫁いでからの自分の孤独を息子を溺愛する事で誤魔化してきた果ての崩壊を描いた物語り。
毒親というのは子供の為という思いが行き過ぎて子供の人権を踏みにじり、成長を妨げ、また愛情をはき違えて自分の思いを押し付けるだけの愚かな親の事ですよね。しかし、この母親は義理の甥を崖から突き落とすという犯罪までおかしても罪の意識もないという狂った人間。もしかしたら突き落とした瞬間に狂ったのかもしれない。いずれにしてもこの人を裁ける法はもう無いだろう。そこに怖さがあると思う。放っておいては次の犯罪につながりかねないし、息子の健全な発育にも悪影響しかない。
どうしたらこの母親を止められるのか。自分と息子の世界に入り込む全てを排除しようと息子の女友達にも手を出そうとするこの狂気を誰が止めるのか。中学生の息子にはあまりにも荷が重すぎる。
そこで読み手を一番イライラさせるのが呑気な父親だ。おそらく子育てを母親に丸投げし、家事も手伝わず、空いた時間は全て自分の為に使って来たのだろう。結婚しても自分の家庭よりも親族を優先し、妻の変化にも無関心。今現在も妻の孤独の意味がわからず、狂気にも気がつかず、息子の吃音にも無頓着。姉に息子の変化を言われても何もしない。こんな男はそもそも結婚するべきではないのだ。結婚して身の回りの世話をしてもらうなら自分の役目をきちんと果たさなければいけない。たびたび来る姉親子に少しは遠慮して欲しいと言うべきなのだ。
そんな事で孤独に追いやられ、狂ってしまうような妻をちゃんと見てさえいればこんなことにはならなかったのに。もしかしたら溺愛の連鎖もあるかもしれない。狂気の連鎖もあるかもしれない。
そうした日常に潜む心の闇の恐ろしさや狂気の世界に恐怖します。
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血の轍