5.0
優しさがじわじわ広がる
3姉妹と腹違いの妹が、父親の死によって出合い、一緒に暮らすようになるお話です。
時間の経過による登場人物たちの心の動きが、季節のうつろいの様子とともにとても丁寧に描かれています。
彼女達の親にあたる人物が何人か出てきますが、その誰もが弱さやずるさや身勝手さを持っていて、それに子ども達が幼い頃から振り回されます。
彼女達がそれぞれ大人になって、親たちが何を考えていたのか、今の自分は何が心に引っかかっていて親と向き合えないでいるのか、1人1人の考え方も違います。
そして身勝手な親でも、不器用な優しさを持っていること、十分ではない量ではあるけれど親としての愛情を持ち合わせていたことに気付き、それらを受け止められるようになります。
それでも彼女達なりのスタンスで向き合っていく様がとても素敵だと思いました。
特に梅酒のお話がとても好きです。
言葉やセリフが無くても、その行間に他人の気持ちを汲み取る場面も多く、その考え方や返答にいちいち感動したり共感したりしました。
大人も子どももそれぞれの考えをしっかり持ち、そのやりとりや関わりの中で新しい発見があったり人を思いやったり、人として成長が描かれていてよいです。
子ども達だけではなく大人達も、家族の中で、社会の中で、歳を取って(成長して)いく中で、悩みや家族の問題が出てきます。
それらを実に淡々と、でも誠実に向き合う様子がとても素敵で、3姉妹も末っ子のすずもそれ以外の登場人物たちも皆それぞれ個性的で魅力的なのですが、それらを無理なく物語に紡いでいく作者様の才能が見事だと思いました。
バナナフィッシュとは全く違う魅力の、これまた名作でした!
ドラマチックなストーリーというわけではありませんが、優しさがじわじわ広がって安心するというか、心にしっくりくる作品に出会うことができて幸せです😊
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