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コウノドリとは別種の…
一昔前の産婦人科のお話なので、現代の産婦人科的管理とは外れていることもありますが、根底に流れる「妊娠・出産を巡る葛藤」、「幸福なお産ばかりではない」という普遍的事実が、胸に迫る作品です。
同じ産婦人科をテーマにした「コウノドリ」では、主人公の鴻鳥先生が、「生まれてくる全ての赤ちゃんに『おめでとう』と言ってあげたい」と言っていて、それは確かに産科医の理想です。ただ、やはり素直に『おめでとう』と言ってあげられない赤ちゃんがいるのは事実。
「透明なゆりかご」では、そんな赤ちゃんや、それを取り巻く環境を、比較的淡々と描いています。また、流産してしまった、あるいは中絶されてしまった赤ちゃんへの優しい眼差しがある所が、女性作家ならではだと思います。その点で、女性からの強い共感を得るのかもしれません。
漫画的脚色はあるでしょうが、「きっとこんな妊婦さんや赤ちゃんが身の周りにもいる」、「見た目の印象だけで物事を推し量ることはできない」という気付きにもなる作品だと思います。
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