3.0
悪の所在
前半は、かなり興味深く読んだ。
夫の浮気に悩む妻の心の微妙な動きが、なかなか繊細に、リアルに、表現されていると思ったからだ。
(ここからネタバレ)
しかし、夫の浮気相手が実は妻の友人で、こいつがとんでもない女で、しかも夫は浮気をしてすらいなかった、という展開には、私は冷めてしまった。
そりゃ、サプライズはあった。
あったけれど、この女があまりに圧倒的な悪役すぎて、主人公の夫婦は単なる「被害者」みたいな位置になり、漫画の文脈が、変質してしまったように感じた。
私は、何となく、主人公の夫婦が、お互いの悪を抱えて、それをいかに許し、乗り越えるのか、ということに注目していたのだと思う。
もちろん、それは勝手な期待なのだが、この展開になってしまうと、もう別の漫画じゃん、というか、何やらそこまで積み上げてきたものが崩れて台無しになってしまったように感じた。
要するに、裏切られたみたいな気分になったのだろう。
だってもう、夫婦が乗り越えなくてはならない問題なんて、ハナからなかったってことじゃん。
悪いのはこの女だけじゃん。
それがわかった後でも主人公はまた悩むけど、それは、何だかなあ。
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