5.0
押見修造への謝罪
以前、一巻だけ読んで、放っておいた。
そのときは、押見修造という作者は、「惡の華」みたいに、「現実枠」の中のストーリーの方がいいな、なんて思ったのだ。
私が阿呆だった。
サスペンスとしてもスリラーとしてもラブストーリーとしても一級品、という稀有な名作である。
登場人物たちは皆、それぞれの痛みを抱えながら必死に生きようとしていて、誰に、というか、ほとんど誰も彼もに、私は感情移入してしまった。
現在六巻、この先に果たして、どんな「ハピネス」があり得るのだろう。
でもどうか、決死の覚悟で生き延びた人々を待つのが、ハピネス、であってほしい。
押見修造は、この漫画の中で、ある意味、「惡の華」と同じことを描こうとしているのではなかろうか。
過去にとらわれて生きる人々の必死のもがきと悲しみ、そして、どうやっても「普通」に生きられないことの悲しみ。
それはまさしく、「惡の華」で私が魅了された要素だった。
キャラクターは全然違うけれど、「惡の華」の仲村さんと、「ハピネス」のノラが、私にはだぶって見えた。
「普通」でいられない存在の魅力と美しさと危うさを、押見修造は、バンパイアというメタファーに落とし込んで、見事に描き出した。
それは新しい挑戦であり、冒険であったのだと思う。
それを真摯に受け止めなかったいい加減な読者としての過去を、押見修造に謝りたくなった。
ごめんなさい。
素晴らしい作品です。
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