4.0
特別な町、なんて
作者が暮らす赤羽の町を舞台にしたエッセイ風の漫画。
ストーリーを楽しむ、画を楽しむ、漫画の楽しみ方というのは色々あっていいかと思うが、本作は、作者の一風変わった感性を楽しむ、という種類の漫画かと思われる。
この漫画で描かれる赤羽という町は、何だかとても奇妙で独特に見えるけれども、多分、実際は違う。
漫画のネタに溢れた特別な町なんて、現実には、ほとんどない。
赤羽だって、暮らしてみたら、きっと、他の全ての「よくある町」と変わらない、「普通の」町なのではないかと思う。
独特に見えるのは、作者の視線が独特であるためだ。
この人はおそらく、赤羽に住もうが、岩手に住もうが、愛媛に住もうが、そこから何かを拾い上げて、内容は違えど、同じ方向性の漫画が描けたのではないかと思う。
本作を形作っているのは、繰り返し、この作者の感性だが、もうひとつは、行動力だ。
「東京怪奇酒」のレビューでも書いたが、この人は、変な方向の行動力が半端ではなく、それが様々な「出会い」の確率を上げているものかと思われる。
特別な町を描いた漫画ではなく、特別な目と足で、普通の町を特別にとらえた漫画。
私はそう思ったし、それは言い換えれば、どんな町であれ、見方によっては、そこに何か特別なものを見出せる、ということでもある。
それは、自分の暮らす町に対する、あるいは日常そのものに対する一種の愛情みたいなものに感じられて、私はなかなか好きであった。
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