4.0
限りなく等身大
私の好きな押切蓮介の漫画家生活を描いたエッセイ風の漫画。
私が初めて読んだ押切蓮介の漫画は「ミスミソウ」だった。
今まで読んできた全ての漫画を思い返してみても、あれほど深く感情を抉られた作品というのは他にほとんどない。
一体どんな人があんなものを描くのだろう、という興味はずっとあって、本作を知り、手に取った。
本作を読んでしみじみ感じたのは、どんなに強烈な作品を世に送り出す漫画家でも、やはり人間なのだ、ということだ。
それは当たり前の事実なのだけれど、私たちは基本的に、知らない。
あのホラー漫画やあのギャグ漫画を描いている人々が、どんな日常の中で、何を思い、どんな地獄を抱えながら、ネームを提出しているのかを、知らない。
だからといって、別に、本作で押切蓮介がわかったと言う気もない。
作者、というものをナメてはいけない。
エッセイだろうが日記だろうが、作品は作品であり、作者は作者であって、現実の人間ではない。
ただ、この漫画で描かれた押切蓮介の姿は、限りなく赤裸々で、等身大に近いように思えたし、おどけながらも自分の血肉を紙面に塗りたくるような飾らない姿勢には、好感を持った。
こういう生活の中から「ミスミソウ」が生まれたのかと思うと、何だかちょっと、胸が熱くなった。
「ミスミソウ」は、あまりに心にかかる負荷が大きく、一度読んだきり、読み返す決心がつかないでいる唯一の漫画なのだけれど、本作の押切蓮介に敬意を表して、もう一度読んでみようかな、という気になった。
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