5.0
何度も読めてしまう作品
人間と化狼という、カッ飛んでいるファンタジーのようでいて、ただのそういうだけの作品でもなく、読み進めていくと普通の生活のシーンにも置き換えられるような出来事もでてくるので、なんとなくふと何回でも読み返してみたくなります。特にこの歳になると、ラストシーンはなんかとっても心にしみるし、これはこれでハッピーエンドだと、緋紗子は幸せだなと思えます。歳をとっていく人間と歳をとらない化狼。見た目はどんどん差が開いて行ったでしょうが、最後まで愛し抜かれて、大好きな人が最後までそばにいてくれる安心感、孤独を感じることなく最後まで生きられたであろう人生は羨ましいなぁと。最後、読者の想像できる余韻をたくさん残してくれているのも、きっと何度も読んでしまう理由かもしれません。初めて読んだのは10年ほど前。その時はラストの余韻を持て余し、なんとなく寂しい気がしていましたが、10年の間に色々な人間関係を経験したり、身内や知り合いに何人か逝く人を送り出す機会があったせいか、このラストは今の私にはなんだかとてもハッピーエンドだと納得できるようになりました。夜斗の存在により緋紗子も永遠だし、また、この先桜と狼のカップルになっても素敵だなと。それを待つ夜斗の誠実さにもなんだか心が打たれます。またこの先も何度も読む作品だと思います。
- 30