5.0
溺れる
主人公の男がクズだとかゲスだとか、まあ、異論はないけれども、男がみんな泳太みたいかどうかは別として、泳太が体現している「要素」は、多くの男が持っているものではないか、という気がする。
それは、どうにも抑えられない性欲だったり、勘違いのロマンチシズムだったり、安っぽいヒロイズムだったり、自分でも気づいていないナルシシズムだったりで、その全てが否定されるべきものなのかも、難しい。
いずれにせよ、若い男の極めて普遍的な弱さを結晶化したような泳太の造形は、見事だと思った。
それに比べて、女は、という話だ。
もう、強すぎるし、怖すぎる。
別に初めて感じたことではないが、私のような男は、女には、絶対に勝てない。
泳太を取り巻く女たちは、全員が別の種類の怖さを発揮していて、その多彩な描き分けが、素晴らしい。
「闇金ウシジマくん」の中で、「ホストの寿命が儚くて短いのは、光り輝くホストより、女の闇が深く暗いからだ」という台詞があった。
そのとおりだと私は思う。
ときに、私たち男はただ、泳いでいるつもりで、溺れることしか出来ない。
女たちによって作られた、深くて暗い、幻想の海の中で。
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