5.0
私小説的コミックエッセイの殿堂
タイトルを見てホッとしました。作家としての名前をタイトルに入れる、そして自らを迷走戦士として作品化するということを受け入れる決意のようなものを感じたからです。
自分の内面を曝け出し尽くして、時には分析し、時には自己愛でいたわりながら乗り越えて行く過程をいち読者としてこれからも見続けたいです。
自己肯定感を得られず悩んだり、愛されたくて苦しんでいる人は、哲学書や凡百の自己啓発書よりも、カビ先生の作品によって心の傷を客観視できて、等身大の自分を受け入れられるはずです。
好き嫌いの分かれる作家さん、と言われますが、、
カビ先生の作品に抵抗をはじめ感じてしまうのは、思春期を乗り越えたひとにとっては、自分が持て余した愛されたい欲、自分が何者でもないという焦り、などにどう折り合いをつけてきたのかという過去を思い出したくないからではないでしょうか。内容があまりにも素直で赤裸々過ぎるので…
しかし、そこに徹底的に向き合って自己とがっぷり組み合って、作品化できる作家さんは稀有です。
カビ先生はすでに「何者か」になり、はたからみて大成している方といえるのですが、自分で自分を認めることは世間的にどんなに認められている人でも難しいということでしょう。自分を認めてあげられるのは自分だけ、ということに何十年もかかって人は気づきます。
ネタバレですが、すべての人類は女性を求めるものであるが、女性は男性を好きになるというフェーズにどこで移行するのだろう?という一節に激しく同意しました。
男性への恐怖心や、自分の体が女であることへの違和感はありつつも、カビ先生よりも長く生きているとそのような感覚すら忘れてしまっていました。
これからも目が離せません。
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