5.0
冒頭の献辞
反抗期で母にぞんざいな態度をとる高校生のマサト。
父は、長距離ドライバーで留守がち。
ある日、いつものようにだらけた態度のまま部屋に篭るといつの間にか眠っていた、
リビングに行くと、母は既に立ち去った何者かに惨殺されていました。
犯人は捕まらず、
生意気で全然愛情や感謝を伝えていなかった日々やその日に限ってヘッドホンで音を遮ってしまっていたことを後悔しながら
マサトは、転職した父と何とか日常を取り戻そうとするのですが、
今度はマサトがチンピラに因縁つけられ暴行され、死んでしまうことに。
が、そこに鬼が現れ、今死んで天国へ行くか、或いは鬼に魂を売って生き延びるか、ただしその場合、いつか最期を迎える時は必ず地獄行きに決まると、マサトに選択を迫ります。
生きるため鬼に魂を売ると決めるマサト。
しかしこの鬼・豪鬼は実は割と高位の鬼で、誇りを持った話せる奴。
マサトは豪鬼に聞いた話から母を殺したのは鬼に魂を売った人間の誰かだと確信し、
鬼憑きの人間を探すことに。
そして、その先々で鬼や人間達の起こす悪事に出会い
その末路や、鬼を退治したところで救えない人々に心を痛めていきます。
その度に豪鬼は、自分たちはちっぽけな存在で、聖者になんてなれないのだと言うのでした。
……
もう、これでもか、というくらい始まり頃の主人公が可哀想で、
豪鬼に死か地獄かを選ばされる辺りで、こんなに理不尽な設定、作者さんは命を軽視しているかサディストなのかな…と正直少し嫌気がさしたのですが、結構その後の展開も面白く、まだ中盤なのですが、寝不足になるほど一気読みしてしまいました。
それで、途中まで読んでから知ったのですが、作者さんがこの話を描いたのは、実は作者さんの親友が理不尽に暴行され殺害されたという重い現実の背景があり、
漫画にしか出来ない問題提起を模索した末に描かれた作品なのだそうです。
物語の冒頭で献辞を書かれた人がその親友さんらしいです。
それを知ったら、作品中の残酷な描写も決して命の軽視などではない、現実の理不尽を訴えるために描かれた物なのだな…と、
知る前とは違った印象を抱くようになりました。
この後書きは本来、「決意表明2」の後に書かれているようで、めちゃコミでは省かれているのですが、
出来たらそれも載せた方がこの作品のメッセージが伝わるのではないかと思いました。
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