5.0
完成された世界観、少年漫画の文脈
舞台は江戸の吉原、主人公の花魁が、この世とあの世の狭間で、迷える死者や生者を導いてゆく、という話。
特筆すべきは凝ったディテールで、衣装や背景、小道具や台詞回しに至るまで、きちんとしたリサーチに根ざしていながら、それをこれ見よがしに主張するでもなく、実に品があって、粋である。
華やかで、可愛らしく、それでいて人間の醜悪さ、情念の苛烈さや業の深さ、という部分もきちんと織り込んだ作品世界は実に魅力的で、完成されている。
これほどパリッと完成された世界観はそうあるものではなく、読んでいてとても心地よいトリップ感があった。
主人公は「結果的に」多くの死霊・生き霊を救ってゆくが、その本質は、特別な能力などではなくて、きちんと人間に向き合うこと、他者の痛みから目を背けないこと、である。
圧倒的な真っ直ぐさと優しさが、理屈を超えた力になる。
これは完全に少年漫画の文脈であって、この特殊な舞台装置の中で、ある種の王道的な文脈が躍動する様は、漫画としてひとつの発明であったのではないかと思う。
情をもって情を制す。
人間はどこまでも醜くも残酷にもなれるけど、でもほら、捨てたもんじゃないだろ?と流し目で囁くような漫画であって、それは、一流の花魁の姿そのものと重なるような気がした。
いやー、粋だねえ!
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