4.0
いるはずのない彼ら
この作者の「幽霊塔」という漫画は、それはもう、夢中で読んだのだが、本作にはどうにも入り込めなかった。
安定してクオリティは高いし、サイコキラーとの心理戦は実にスリリングで、漫画としての見せ方も抜群に上手いと思う。
しかし、申し訳ないが、根本の設定に、どうしても冷めてしまった自分がいる。
「連続殺_人犯から情報を聞き出すために獄中結婚する児童相談所の職員」。
そんな奴、いるわけねえのである。
そしてそのサイコキラーは、女性だ。
ちなみに「殺_人ピエロ」と呼ばれた連続殺_人犯は、アメリカに実在した。
ジョン・ウェイン・ゲイシーは、普段はパーティーなんかでピエロの格好をして子どもを楽しませていた地元の名士だったが、三十人以上の少年たちを殺めたサイコ野郎だった。
もちろん、男性である。
ピエロに扮して次々と男を葬る女性のサイコキラー。
これまた、いるわけねえのである。
これがファンタジーの世界ならいい。
不気味で可愛らしい女性のサイコキラーがいても、魅力的で破天荒な主人公がそのサイコキラーと結婚しても、構わない。
しかし、本作はあくまで「現実枠」内の物語である。
そういう種類の漫画において、「いるわけねえ」主人公(しかも二人)というのは、私にとっては致命的であり、そこにどっぷり浸かって夢中になれるほど、私に読者としてのキャパはなかった。
- 8