5.0
甘美な沼
主人公、玲は儚げで美しく男を虜にしてしまう女性。ハイスペだけれどモラハラな婚約者、玄との結婚を控え悩んでいる。そこで出会った美術の専門学校の先生に誘惑され、自分に素直になる快感とときめきを知ってしまう。先生は若くてハンサムだけどれどお金がない。玲はそんな先生とは一緒になれないとつっぱねる。玲に一目惚れし身体を合わせると尚一層ハマってしまった先生は打ちひしがれる。そこにかつての教え子、亜季が垢抜けて現れ若さで先生に猛アタック。火遊びから始まった様々な関係がもつれ愛憎こもごもなドラマを繰り広げていく。
玲も先生も玄も亜希も守さんも、いるいる〜あるある〜と思って読みました。キャラ設定に説得力があるし、国の背景の違いもあれど無理なく感情移入ができました。私は一番亜希が切ないポジションだと思います。辛い家庭環境からの逃避で大好きな先生に告白するも玉砕。時間を置いて可愛くなって再度体当たりして先生が弱ってるというタイミングで見事陥落、毎日押しかけて一緒に過ごし恋人の地位まで上り詰めたと思っていたのに、先生は玲に再会したとたん一瞬にして心持っていかれてしまう切なさ。先生は来るもの拒まずで亜希の若さと身体と熱意を存分に楽しんでいたのに、本命がきたらあっさりバッサリ切るというフラットさ。そんなクズ先生も玲には泣いたり怒ったり悲しんだりとどハマりまりな様子。亜希ではそこまで先生の感情を引き出すことはできないし、先生が冷めて離れることを恐れて不幸な生い立ちや現在の状況など、自分をさらけ出すこともできない。だから、亜希に守さんが現れた時は救われました。ちゃんと自分をまるっと大切にして、責任とってくれるほど愛してくれる人がいる。「亜希はお前みたいなクズに適当にされていい女じゃないんだよ!」ってちゃんと殴ってくれてスカッとしました。けれど人ってなんで愛をくれる相手よりも、自分にとっては毒でしかない沼な相手に行ってしまうんでしょうね〜。肝心の主人公玲は、そもそも玄のお金なんかにしがみつかなけりゃいいのにね。彼女は玄のモラハラに耐えつつ次第に駆け引きや口答えも覚えて、なんなら玄のお金で先生を近所に囲っちゃって、強くしたたかにやってますけれども。なんだか先生の方が男のプライドズタズタなのに玲にズブズブで病んできていますね。
切なくもいい気味。と思います笑
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