1.0
杜撰な闇
おそらく東電OL殺_人事件を下敷きにしているのだろう。
「エリート検察官がなぜ?」というつかみはなかなか吸引力があったし、それに引っ張られて最後まで読んでしまった。
しかし、その「なぜ」に対する答えが、あまりに杜撰すぎる。
歪んだ親子関係も、制御できない性欲も、あまりに浅薄で、何となくセンセーショナルでヤバそうな題材を並べただけであり、何のリアリティーも説得力も迫力もない。
こんなもので人間の「闇」を描いているとでも言うのなら、はっきり言って、ちゃんちゃらおかしい。
闇を描くには、覚悟が要る。
ニーチェが言ったように、私たちが深淵を覗き込むとき、深淵もまた、私たちを覗き込んでいるからだ。
その覚悟もないまま、深淵の表面だけをなぞって、人間の暗部を語るような作品が、私は嫌いである。
たとえ漫画の中であろうと、あまり人間をなめてはいけない。
彼らの、あるいは私たちの抱える闇は、こんなに浅くない。
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