5.0
暴走する妄想、生きるための笑い
昔の恋人を引きずるのも、やたら妄想が暴走するのも、男性の性分、という勝手なイメージがあったので、まず設定が新鮮だった。
ああ、「臨死!!江古田ちゃん」の人か、と納得。
この作者は「明るい自虐」みたいなものの描き方がとても上手で、客観的にはすごく惨めな状況を、ちゃんと笑いに変える。
でも、本当は笑えない何かを、心の底には、持っている。
主人公が何気なく漏らした「私はそーゆーのもう終わっちゃってるんで」には、涙が出そうになった。
私にも、全く同じことを思いながら生きていた頃があった。
仕事は順調で、毎日がそれなりに楽しくて、周りは「まだ若いじゃん」と笑うけれど、何年も忘れられない恋人がいる、それだけの理由で、「いや、終わっちゃってるんで」と思いながら生きていた、そんな時代が。
すごく笑えるんだけど、ちょっと切ない。
この漫画の「笑い」は、どこかで何かを諦めながら、それでも生きてゆくための、必死のあがきみたいに感じるから。
それって多分、笑い、というものの、ひとつの本質なんじゃないか、と。
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