4.0
それでも、愛は、愛
一気に読んでしまった。
原作の利なのだろうが、読ませるパワーがすごい。
恋人の失踪。父の癌が発覚。母の死。
立て続けに起きた不幸の中、見つけた謎のノート。
父は、母は、人殺しなのか?
母だと思っていた人の正体は?
そして、自分自身の正体は?
ノートの内容は、前半はサイコ的な恐怖を感じさせるが、後半は、ミステリとしての面白さをキープしつつも、叙情的な方向に移り変わってゆく。
それは、この作品のテーマそのものとシンクロする。
異常な殺_人者の告白から、異常な愛の物語へ。
このシフトチェンジが素晴らしい。
終盤、主人公の殺_人気質が覚醒し、自らの体に流れるおぞましい血によって、呪わしい運命を辿る、という展開も、ありだった。
でも、母の愛が、それを救った。
過ちから始まった愛。
秘密と偽りのもとに成立していた愛。
人を殺めることで誰かを守ろうとするような愛。
愛を手にする資格など持たないような者の愛。
自らは死に向かうことで、誰かの愛を生かすような、悲しい愛。
それでも、愛は、愛。
ラスト、車で走り去る二人を見送りながら、私は、そんなことを考えていた。
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