1.0
あの事件、あの頃
年齢がばれてしまうが、私が14歳のとき、「あの事件」が起きた。
大袈裟ではなく、それを機に、私の世界は変わってしまった。
あの事件が起きるまで私が生きていたのは、自分と同じ年代の少年が残虐な犯行に手を染めるようなことは「ない」世界だった。
それが、一瞬にして「あり」になった。
そのことをいいとも悪いとも言わないが、事実として、そうだった。
事件そのものではなく、世界が変わったという衝撃は、14歳の私には扱いきれないものであった。
そして彼が今、この世界で普通に(と言えるかは難しいが)生きているという事実は、今の私にすら扱いきれないものである。
それについて、どう感じるべきなのか、わからないのだ。
あの事件をモチーフに漫画を描くことを否定するつもりは全くない。
ただ、個人的な感情の問題だが、やるならば、きちんと踏み込んでほしかった。
あの事件が、社会や時代や、そこに生きる子どもたちや大人たちに何をもたらしたのか、それに、迫ろうとしてほしかった。
私がこの漫画から感じたのは、「興味本位」を招くあざとい扇情性や表面をなぞる異常性でしかなく、あの頃を14歳として切実に生きた私にとって、それはどうしても受け入れられなかった。
- 98