5.0
可愛くて、切なくて、ゾッとする
素人の私が見ても決して「上手い!」という絵ではないのだけれど、漫画の表現として、読む人の感情を揺さぶる力があると思った。
一種のホラー漫画だとは思うのだが、そのアプローチは変化球もいいとこで、それゆえ、独特の怖さがある。
基本的には、ラブコメみたいなタッチで話が進む。
主人公は、生きるのが下手な女の子で、不安定で、問題もあるけれど、その真っ直ぐすぎる愛情は、いじらしくて、読んでいて切なくなる。
しかし、である。
不意に、ホラーの文脈が来る。
これは、きつい。
お化け屋敷に入るとき、ホラー映画を観るとき、私たちは、無意識に「心の準備」をする。
「さあ、これから怖いものを見まっせ」と。
けれど、この漫画は違う。
心の準備を忘れかけた頃に、唐突に思い出させられるのだ。
「あ、やばい、これ、ホラー漫画だったわ」と。
読者のガードを下げておいて、ホラーのパンチを叩き込む。
そういう怖さの表現が、とても効果的で、また、新しいと思った。
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