『ドラゴン桜』勉強法。受験のマイナスイメージを漫画で吹き飛ばす!
更新日:2016/12/16 10:00
「ドラゴン桜」 (三田紀房/講談社) でイヤでも目につく表紙の言葉が、「教えてやる!東大は簡単だ!!」です。主人公の桜木先生は龍山高校の超進学校化のために、まずひとり東大合格者を来年出す、と宣言します。
ドラマ化もされ社会現象にもなったので、内容を詳しく知らない方でも、「受験モノね」という程度にはご存じのことと思います。
しかし読み進めれば、単なる受験テクニックを題材にした漫画ではないことに気づくでしょう。なぜ東大にこだわるのか。超進学校化は生徒を幸せにするのか。
そういう重厚なテーマに向き合った豊かな作品です。作中で語られる勉強法を振り返りつつ、一緒に見ていきましょう。
ドラゴン桜とは
物語は破綻がほぼ決定した高校、龍山高等学校を清算するために弁護士・桜木建二がやってくるところからはじまります。
最初は学校法人の破産を前提に、清算手続きを進めようとした桜木ですが、自分自身の野望のためという動機も手伝い、学校の超進学校化を実行し、立て直すという目標に変更します。その一里塚が、翌年の受験生から東大合格者を出すというもの。
東大受験を目指すことになった水野と矢島というふたりの生徒に、桜木が連れてきた癖が強いながらも優秀な教師陣が、東大合格のための勉強法を伝授していきます。
英語は自分で使うことから
英語の担当教師として、龍山高校にやってきた川口先生が最初にやったのが、ビートルズの歌を流し、体を動かしながら一緒に歌うということでした。
そして歌い終わったあとはすぐに、歌詞の解説が始まります。
川口先生は、励ます目的もあったのでしょうが、歌詞の英文を読ませた矢島を「歌ってフィーリングつかんでるからスラスラ出てくるね」と褒めます。
声に出す、体を動かしながら口にする、わかるところだけでもどんどん行く。そういう「使っていく」方法を基本に、川口先生はふたりに英語を指導していきます。
辞書は使うな!単語はターゲット1900
日本語の文章に対しては、辞書を引きながら読む人はまずいない。それは意味を推測できるからだ。それなのに、英語になると全部の単語の意味を知ろうとする。と英語を担当する川口先生は生徒のふたりに語ります。
受験に必要なのは多くて2000語といい、わからない単語はターゲット1900の索引から調べ、ターゲットに載っていないものは推測するか飛ばすように指導しました。
受験時代に実践していた学生の声
「分からない単語は分解。そして分解したものの意味を推測して組み立て、ターゲット1900で確認ということをやっていました。例えば“foundation”だとfound+ation、foundの意味は…という流れです。試験で知らない単語がでてきたときもこの方法に日頃から慣れていたので推測できるようになりました。」(2014年大学入学/女性)
リスニングは追いかけながら読む!
リスニングを鍛えるのに、ラジオ学習は定番のように思えます。しかしドラゴン桜の川口先生は、それでは不十分と断言します。
ただ聞いているだけでは、休んでいるのと同じという先生の提案する勉強法が、英文を声にだして読むというもの。
しかも、先生が読んだあと、同じようにまねして読む、追い読みが効果的だといいます。
受験時代に実践していた学生の声
「聞いたことがない、分からない単語は聞き取れても口に出せないから自分の分からない部分が明確になります。分からなかったところは何回も聞いて口に出して復習しないと意味がなくなっちゃうと思います。」(2013年大学入学/男性)
数学はスポーツ!ゲーム!
理屈がわかれば解けるのに、と考えがちなのが数学です。
しかし担当の柳先生はふたりの生徒に「これは解答という結果を出し、達成感を味わうゲームなのだ」といいます。
ゲームであるならば、必要なのは繰り返し練習することだけですね。
過去のゲームから法則などを類推し、仕組みを理解してクリアを目指す人などほとんどいないでしょうから。
だから受験数学に必要なのは計算力と、反復練習というわけです。
体を動かしながら公式を覚える&計算を解く
数学の研究をするというのなら話は違ってくるのでしょうが、受験というフィールドでは論理的に理解するのは土台無理なのだ、と柳先生は断言します。そして提案したのが数学をある意味スポーツととらえる方法です。
卓球の構えをして、体を動かしながら次々と出される問題に反射的に解答していく。これによって、より多くの問題パターンと解答を蓄積していくという勉強法です。
起床3~4時間後に数学の勉強を
柳先生のスパルタ合宿をしたときに伝えられたのが、この午前中に数学をやる、という勉強法です。
脳は起きてから3~4時間後最も活発に動くという仕組みを利用し、数学など思考力を必要とする問題をこの時間帯で勉強しようということです。
これはスケジューリングの話ですが、広い意味では勉強法に含まれるでしょう。
受験時代に実践していた学生の声
「自分は浪人だったので午前中は全て数学に費やしていました。問題集をひたすら解き、分からなかった問題は解けるまで解きます。時間が経つと忘れるので何日かおいてまた繰り返します。」(2014年大学入学/男性)
国語はすべての教科の基礎となる
他の教科も問題文はすべて日本語です。英語でさえも、日本語に訳して考える。
それなのに、国語はきちんとした勉強をしなくてもテストではなんとかなるという気がしている生徒が多いと、担当の芥山先生はいいます。
肝心の読解力や文章表現力を磨くにはどうしたらいいのか。芥山先生の勉強法を見ていきましょう。
頭を使って正しく読む
文章を読むことにもなれてきたふたりの生徒に、国語担当の芥山先生は正しく読むことの大切さを説きます。しかし、じっくり味わいつつ読む時間はない。
そこで先生はふたりを街に連れ出し、なぜという「疑問」を常に持つことで看板などからも様々な情報が読み取れることを伝えます。
本を読むときはもちろん、街を歩くときでも「なぜ」の心を持って勉強することで、正しく読めるようになる、という勉強法です。
受験時代に実践していた学生の声
「現代文は選択肢から逆算をして答えが文章のどこにあるか探していました。その選択肢がどうして正しいのか、間違っているのか、常になぜ?と自分に問いかけなければならなかったので試験前も常にトレーニングしていました。」(2015年大学入学/女性)
漫画で先に内容を掴む
理系の受験生が特に避けがちな古典で差を付けるために桜木先生が提案したのが、漫画で先に有名作品の内容を押さえる、という勉強法です。
桜木先生の言葉を借りると、古典の作品はスケベなやつらがヒマつぶしに書いたものだから、中身はたいしたこと書いちゃいない、となります。
そこで文法は別にして、ひとまず現代文で、それも漫画で内容を知っておこうというものです。
受験時代に実践していた学生の声
「僕は源氏物語を漫画で読みました。大学によっては源氏物語を毎年題材として使うところもありますし、そのときにシーンが頭に思い浮かぶとヨッシャ!ってなりましたね。」(2013年大学入学/男性)
理科は問題数をこなし短期間で準備を
受験においては「とにかく英数が鍵」と思っている生徒が多い、と理科担当の阿院先生はいいます。
しかし理科は英数と比較して、圧倒的に範囲が狭く、夏にしっかり準備すれば点数を稼げる教科なのだそうです。そんな理科を、ふたりがどう勉強していったのか見ていきましょう。
問題解答同時プリント
理科を担当する阿院先生が使った勉強法です。しかしその内容は、かつて一緒に塾を運営していたという数学担当の柳先生が詳しく解説しています。
用意するものは、問題が書かれているプリントと、その解答が書かれているプリントです。解答はまず伏せておいて、問題を読みます。そして解答の糸口を掴んだと思ったらすぐに正しかったかを解答のプリントで確認する、という方法です。
短時間で、浴びるように数多くの問題に触れるのが目的です。
受験時代に実践していた学生の声
「化学や物理はたくさんある公式をいろいろなパターンに当てはめながらどれを使うかという引き出しを作るためにとにかく数をこなしていました。」(2013年大学入学/男性)
社会、歴史は遡れ!
作中で社会を担当するのは、桜木先生です。
理由は、新たに先生を雇う予算を使い切ってしまったからと述べていますが、読んでいるとそういうわけでもない、ということが伝わって来ます。
ふたりの生徒は主に世界史を勉強していくわけですが、ここで必要な勉強はとにかく歴史的な事実を覚えること、です。
いかにモチベーションを保ち、物事を整理して記憶するかが問われるわけですから、ここまでふたりを引っ張ってきた桜木先生の出番だったわけですね。
歴史は後ろから遡れ!
歴史系の勉強すべてに共通する攻略の決め手、と紹介されたのがこの「逆から」というキーワードです。つまり歴史を遡るように覚えていく、という勉強法です。
これには出題頻度という理由もあるのですが、一番大きいのは国語でもあげた「なぜ」というキーワードが使えるということです。
因果関係が一番記憶に残りやすい関連性であることに着目し、結論を先に掲げて、「なぜ」で出来事を紐解いていく、理にかなった方法ではないでしょうか。
その他ためになる!勉強のコツ
勉強法といっても、実に様々な局面があります。テストに臨むときのテクニックから、生活習慣まで。広い意味では、その全てが勉強法といえるでしょう。
ここまでは教科ごとに勉強法を見てきましたが、一般的にみても納得がいく、合理的だと思えるコツをご紹介します。
蛍光ペンは使うな!
数学の柳先生の鉄則から、「ノートを汚して教科書を汚すな」というものがあるそうです。そのため先生は、蛍光ペンの使用を認めません。
まず、線を引いたことで覚えた気になってしまうという弊害が防げます。
また教科書が線や書き込みで汚れると、覚えた気になってしまってもう一度そこをやり直す気力が薄れてしまうため、これを防ぐ意味でも教科書は常に真っ白にしておけといいます。
東大医学部生のノート(メモリーツリー)
地学は知識量の多さが勝負の決め手、ということで理科担当の阿院先生がふたりに渡したのが、枝と根が張った木が描かれているノート、メモリーツリーです。
先生曰く、これは東大医学部生も使っているというマインドマップに似たもので、「関連付け」と「強調」を使うことで、暗記量を増やそうというものです
『ドラゴン桜』の桜木建二は、作品の冒頭で元暴走族であるかのようなコマがあり、また物語後半では「高校に入ってもいない」と本人が話している描写があります。
しかし、そういう素地の教師がはちゃめちゃするという物語ではありませんし、アウトローなやり方で受験に革命を起こすような話でもありません。
たしかに学校改革は相当強引に進めますが、受験に限ってはどこまでもそのルールに対して真摯です。またふたりの生徒も、ひたすら机に向かい続けます。
しかし受験漫画ではありますが、東大合格をただヒステリックに叫ぶ漫画でもありません。そのことがよくわかる私の好きなシーンから、数学の柳先生のセリフを引用して終わりたいと思います。
「ああいう寂しい目をしたコは最後には勝つ」
「だからこそ 東大に挑戦させてみたい」